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第四章 食料危機は人災で起きる
問題1
化学肥料や農薬の多様は土壌の中の微生物を減少させ生態系を破壊する。
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土壌の保水力が失われる。(大雨による洪水被害が拡大している背景)
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微生物の減少は植物の成長にも影響を及ぼし、根が張らなくなった植物が更に大量の水を必要とするようになる。
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世界の水不足が加速する
問題2
リン鉱石があと30年~数十年で枯渇し、化学肥料そのものを作ることができなくなる。
問題3
化学肥料としての硝酸態窒素が人体に悪影響を及ぼしている
問題4
グリホサートをかけても枯れない耐性雑草が出現している。薬剤耐性(AMR)菌によって日本では年間8000人が死亡している。2050年には世界で約1000万人が死亡するという予測もある。
問題5
化学肥料が溶け込んだ排水により、海に生物が棲めないデッドゾーンが広がっている。
グリホサートは2000年に特許が失効したため、モンサントは「グリホサートに耐性を持った遺伝子組み換え作物」とグリホサートのセット販売によって、農業生産者にグリホサートの排他的契約を結ばせている。
バイオメジャーの種と農薬を買わなければ農業ができない時代になりつつあるのだ。
日本でも2000年、改正種苗法によって自家採取が制限された。
「圧力によって関税を撤廃させ、相手国の農業を補助金漬けのアメリカ産作物で駆逐する」という話。そして、これが世界の人々の命を振り回している。
こうした「アメリカだけが利益を得られる仕組み」が食料危機をもたらす。
「牛乳あまり問題」という人災
元々日本は牛乳不足が続いていた。
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そこで農水省は「畜産クラスター事業」で補助金を交付し、酪農の生産量を伸ばした。
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ところが、コロナ禍の発生で、乳業メーカーの乳製品在庫が積みあがる事態になってしまった。
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これは政府が牛乳需要の創出を行わなかったことにも問題がある。
ところが、本来なら政府が牛乳を買い上げるべきところを
「牛乳を搾るな」
「牛を処分すれば一頭当たり五万円支払う」
と通達を出したのだ。
また、コメ余り、牛乳余りが起きている背景には、生活苦から買うことができない人が増えているという事情もある。
だからこそ、コメや牛乳を政府が買い上げてフードバンクや子ども食堂などを通じて困窮世帯に配れば有効な人道支援になる。それなのに、政府は、表面的な理由をつけて意固地になって買い上げを拒否し続けている。
酪農家の連鎖倒産と政府の農政軽視
コロナや戦争の影響によって生じている生産資材価格の上昇により、200頭以上の牛を飼育する大規模経営が赤字に陥っている。このままでは大規模経営から連鎖的に酪農家が倒産していく可能性もある。
酪農家が苦境に直面している理由の一つが乳代1kgあたり2円の農家負担金だ。輸入している脱脂粉乳を国産に置き換えるための差額を農家に負担をさせるもので、北海道全体で100億円規模に上り酪農経営の重い負担となっている。
政府はこうした状況を救おうともせず、海外から大量の乳製品を輸入し続けているし、畜産クラスターもいまだに続けている。
政府が言うには、貿易協定で約束した「カレント・アクセス(最低輸入義務)」を守るためだという。だが、実際は、「国内に輸入品の需要がなければ無理に輸入しなくてもいいもの」であって義務など存在しない。
酪農家全体が直面している経営危機を作った原因は政府なのに、酪農家の倒産は自業自得のように言われてしまうのだ。
日本の酪農家が崩壊し、食料危機が起きたら日本人の食料供給は本当にストップしてしまう。
「日本の酪農業を潰したい連中の意図」しか感じない。それ以前に「地球の汚染」が取返しのつかないところまで来ていることを知って愕然とした。日本が「稲穂が実る国」「水が美しい国」そんな原風景までも失っていくのは見るに忍びない。50年後のこの国は(あればの話だが)とてつもなく無機質で、八百万の神が壊滅した世界なのだろうな。
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