「アニメ化決定」とか言ってたくせに、まったくそういう話が出て来ないまま夏アニメに突入。いまだに気配もないという…😢
「多少待っててあげるから、嘘はつかないでね」と言うしかないこの状況で、とりあえず原作のまとめをしておこう。(思いっきりネタバレありなのでご注意を!)
時は15世紀。宗教という名の支配者が民の自由意思を奪い、逆らう者を容赦なく虐殺していた時代のお話。
いきなりエグイ拷問シーンからはじまる。
この巻の主人公はラファウという名の少年。天才であって周囲には上から目線なのだが、世渡り上手なため出世街道まっしぐら。12歳で大学進学を決めたラファウは「もちろん神学を専攻します」と宣言するが……心の底には「天文」に対する情熱があってひそかに星の観察をしていた。
そんな彼に養父のポトツキは眉を顰めるが、ラファウにはポトツキを悲しませるような道を歩くつもりはいっさいなかった。空のことは諦めたのだ。順風満帆な美味しい道を歩いて生きるつもりなのだ。
そんな彼を一気に空につなぎとめた男がいた。「元学者で異端者」のフベルト。彼は「地動説」を研究したがために拷問されたのだ。「改心した」と宣言したことで釈放されたのだが、それは「やり残したことをやり遂げるため」の嘘の宣言だった。
彼から「地動説」を聞かされたラファウはそれを美しいと思ってしまった。
神を否定しているのではなく、神を信じているからこそ自然を読む。「神が作ったこの世界は、きっと何より美しい」というフベルトの言葉。「天文をやれ。自分の為に」と言う彼の言葉がラファウの心に突き刺さる。
家に帰るとそこには派遣異端審問官のノヴァクが居た。元傭兵だけあってその拷問のえぐい事ハンパないのだが、一見「いい人」っぽいところがよりエグいヤツ;
彼はラファウの地動説研究ノートを没収していた。「なにこれ?」と問われるラファウの前にフベルトが現れて「それは私の物だ」と告げる。異端は二度つかまると絶対死刑……フベルトは自ら焼かれる選択をしたのだ。
フベルトはラファウにペンダントを渡し、それが彼の「やり残したこと」だと言い残した。後日、そのペンダントはラファウをある場所に導いた。そこにあったのは「地動説研究の資料」と手紙。手紙の主は研究を焼いてくれるよう依頼していた。「地動説は恐らく証明できない」と。
「仕方ないよな」と資料に火をつけたラファウだった…が…
そしてラファウは「天文」を選んだ。そして彼は「地球を動かす」意思を持った。
ラファウは義父ポトツキの手前「神学」を専攻することにした。だが、こっそり地動説の研究は続けていた。そんなある日、焼け残ってしまった研究の下書きにポトツキによって修正が加えられているのを見て驚愕した。
実はポトツキには異端研究の前科があった。そして、ノヴァクに「異端である養子を庇うことで人生は終わる」と脅されたポトツキはラファウの研究を密告してしまうのだ。
拷問がはじまる前日、ノヴァクは拷問の恐ろしさを伝え「そこから逃れたいなら裁判で改心を宣言しろ」と勧め「賢い君は正解を選べるはずだ」と言い残す。
いったんはその道を選ぼうと決めたラファウだった……が、収容された部屋の小さな窓から見える宇宙(そら)が彼を引き戻した。
そして、裁判所でラファウは自分にとっての「正解」を選んで宣言した。
拷問の前夜、ラファルの元に訪れたノヴァクに語った言葉。
「敵は手強いですよ。あなた方が相手にしているのは僕じゃない。異端者でもない。ある種の想像力であり、好奇心であり、逸脱で他者で外部で……畢竟、それは知性だ。あれは流行り病のように増殖する。宿主さえ制御不能だ。一組織が手懐けられる程かわいげのある物じゃない」
ラファルはこっそり持ち込んだ毒物と芥子によって自殺を選んだ。「自殺が神の教えに反してる」とノヴァクに糾弾されるが、そこで偉人の言葉を引く。
ソクラテス曰く「誰も死を味わってないのに、誰もが最大の悪であるかのように決めつける」
エピクロス曰く「我々のある所に死はない。死のある所に我々はない」
セネカ曰く「生は適切に活用すれば十分に長い」
「僕はその全てに賛成です」
「フベルトさんは死んで消えた。でも、あの人がくれた感動は今も消えない。多分、感動は寿命の長さより大切なものだと思う。……だからこの場は、僕の命にかえてでも、この感動を生き残らす」
それを「狂気」と括るノヴァクに
「確かに。でもそんなのを、”愛”とも言えそうです」
死にゆくラファルの目には宇宙(そら)が見えていた。
【感想】
今ちょうど、こんな中世のような世界になりつつあると思っている。支配者から被支配者に至るまで「金」「自分」という宗教でなりたってはいないか? そして、正しいことを説くものがその命を絶たれていくことも同じ。中世では見せしめに堂々とやっていことを今は「密かに」やっているだけの違い。
「今だけ、金だけ、自分だけ」という人達には絶対に理解できない「感動」「愛」「好奇心」。それは「宗教」と「神」の違いなのだと思った。「神」であるなら、それは美しいはずだ。「お金」をあがめる宗教はひたすら醜い。
自然が描く宇宙の法則はとにかく美しい。人間のDNAだってそもそもは宇宙の法則が生み出したものだ。それをゲノム編集なんぞで操作しようとする人間の愚かさ。神を超えられるとでも思っているのだろうか?
この1冊で、「宇宙の真理」「魂の崇高さ」「死生観」…とあらゆることを教えてくれた良書だった。
第2集は10年後からの話。ストーリー展開が面白くなっていくので、次の記事では第2集~第5集の「あらすじ」だけを簡単に書きました。