クロノス☆日本の終末時計午後9時45分くらい(随時時刻調整)

2024年4月、日本がまた一歩破滅に向かって踏み込んでしまったようです(-_-;) なので動乱を生き抜く戦略ブログにシフトしてます。

『チ。ー地球の運動についてー』第6集~第8集/最終集のSTORY (ネタバレあり…というよりネタバレそのもの)

前回の記事はこちら

c-exceed.hatenablog.com

 

では最後まで一気にいきましょう。この作品は第1集を読んだら止まらなくなるので、忙しい時には読まない方が良いですよw

 

チ。―地球の運動について―(6) (ビッグコミックス)

前作から25年後。

 

異端解放戦線」なる組織が暗躍し各地の審問所を襲撃していた。中でも特別な活動をしていた部隊の長であるシュミットが捕らえられ、C教正統派の審問官に詰問されていた…が、詰問というより審問官を論破していたw

 

「神は理性の外、自然にこそ宿る」、それがシュミットにとっての神なのだ。

 

そして行動が開始された。審問所の警備兵に扮した戦闘員が乱入し爆弾で審問官と警備兵(本物)を吹っ飛ばしたのだ。

 

彼らが審問所から回収したのは、件の本ーオクジーが書いてクラボフスキが再生させたあの本であった。だが、廃村で休憩中にアントニ司教の警備兵に襲撃されて本を民家に隠したまま逃走することになってしまう。

 

場面は変わって、ある移民共同体にドゥカラという金に執着する少女が居住していて死んだ父の「心から不安が消えるまで金を稼ぐ」という伝言を信念にしていた。だが、彼女はどうしようもない叔父によって司教に売られそうになり、その過程で『本』とシュミットと出会うのだ。

 

『本』で大儲けがしたいドゥカラはシュミット部隊と同行することになる。(ドゥカラが一度読んだ本を記憶して本体を焼いてしまったので同行させざる得ないのだが)シュミットとは考え方は対立したが、実はその目的は同じだった。シュミットというか、異端解放戦線の組織長の目的なのだが、この本を活版印刷して情報を解放することを目指して行動しているのだ。

 

ここまで読んでこの作品がアニメ化されない理由がわかってきた。「情報の解放」…それって今の支配者の「この世界を完璧な監視社会(1984の世界)にする」)目的と真逆だもんね。

 

「今、我々の世界では情報は監禁されている。権威による本の検閲から始まり、共同体での相互監視、果ては自ら恐れ忖度し口を噤んでいる」とシュミットは説明するが、まさに「いまこれ」で、歴史はバージョンアップして繰り返されるのだな、としみじみ思うよ。

 

さて、シュミットがそんな話をし、ドゥカラがビックリしている間に馬車は目的地へ。彼らを出迎えた人物をシュミットがドゥカラに紹介する。

 

「こちらが、異端解放戦線(われわれ)の組織長…

 

ヨレンタさんだ」  

 

なかなかスゴイ展開になってきました!

 

チ。―地球の運動について―(7) (ビッグコミックス)

アッシュという名の過激な審問官にダミアン司教は苦言を呈していた。実はこのダミアン司教はノヴァクの部下だった審問官だ。彼はアッシュに「地動説について知りたいのなら」とノヴァクを紹介する。

 

ヨレンタを失ったノヴァクは酒浸りの日々だった。「酒を奢る気がないなら帰って」とアッシュを追い返そうとするが、『本』の話を聞いて「敵は手強いですよ」と言ったラファウの言葉を思い出し「地動説を打ち殺す」という思いが蘇ってしまった。

 

さて、こちらはヨレンタとドゥカラ。(39歳になったヨレンタ。彼女の歯が欠けているのは25年前の拷問によるものだ。皮肉なことにノヴァクは「戦線の組織長は歯が欠けている」という情報を笑った)。ヨレンタは「土星の運行」の話で感動を伝えようとするがドゥカラには伝わらない。結局、「印刷機を彼女に貸し出す」という条件で本の内容をドゥカラから聞き出して書き留める。「…やっぱり、文字は奇蹟ですね」というヨレンタの呟きはオクジーに向けたものだろう。

 

ドゥカラは、シュミットとの会話で聞いた「死を忌避するんじゃなくて肯いたい」という言葉が心に刺さった。けれどシュミットの「人の作る『模倣(ミメーシス)』は遊びのようなもので真剣に従事することじゃない」というプラトンの引用に対しては、「技術は人自然を模倣する。一方で技術は自然が成し遂げないことも成し遂げる」とアリストテレスの引用で返した。

 

ドゥカラを消しますか? というシュミットの問いを否定したヨレンタ。「そういう人には機会をあげたくなる。協力されづらいだろうから」という言葉には、論文を利用されたりした昔の不遇な自分が重なっている。

 

さて、そうしている間に、ノヴァクは解放戦線の活動拠点を突き止めていた。

 

ヨレンタはドゥカラに「思い」を語る。もちろん今は伝わらない。

「なんであの本の為にそんな理屈こねてまで」

「私は、地動説を愛してる。そして、愛してしまったことを祝福したいから」

 

騎士団が拠点に迫ってきた。ヨレンタはみんなを裏口から逃がし、自ら爆死した。千切れた腕が飛び、その手をノヴァクが掴んだ。

 

すべてがヨレンタの「計画」だった。それを知ったドゥカラは「ここで終わったらヨレンタさんもの感動も死ぬ」と彼女の「計画」に協力することを決めた。

 

「貴方達がヨレンタさんの計画を引き継ぐなら、私はヨレンタさんの想いを引き継ぐ」

 

目的地について活版印刷がスタートした。だが…フライが裏切ったのだ。というより、元々敵のスパイで、ま、この人はこれまでの行動から匂っていたので裏切るだろうとは思っていたが……どうやら、25年前に登場した両親を解放戦線に殺されたC教信者の男の子らしい。

 

フライは死んだが、彼の通報で騎士団が迫っている。ドゥカラは「皆が私を逃がす」という案を提案する。それが出版するための選択肢だと。最終的にシュミットがその案を命令に代えて決行されることとなった。ドゥカラはヨレンタへの想いのために仕事をしようとしているのだ。

 

馬を奪ったシュミットとドゥカラが逃走する。気づいたノヴァクたちが追う。

 

チ。 地球の運動について コミック 全8巻セット

ドゥカラを守ってシュミットはノヴァクの剣に貫かれた。彼が死の間際に残した言葉は「私が…選んだ…運命だ」。今までずっと「神に与えられた運命」を辿って来た彼が初めて「運命を選ぶのは自分」と主張した瞬間だった。

 

さて、ドゥカラが向かった先はアントニ司教のところだった。彼女は司教を説得し、地動説を娯楽や仮説として出版することの合意を得た。

 

だが、馬の足跡でドゥカラを追ってきたノヴァクによって司教は殺され教会には火が放たれた。ドゥカラも殺そうとするが逆に刺されてしまうノヴァク。

 

死にかけたノヴァクの前に幻のラファウが現れ二人は会話をする。「異端者に対する痛みを感じていたのにそれを無視したから自分は『悪役』になってしまった」と語るノヴァク。「娘は天国に行けたのか?」と問う彼にラファウの幻は「生きてるうちにやり残したことをすればいい」と言う。ノヴァクは持ち続けていた解放戦線組織長の吹き飛んだ腕を出し、自分が昔彼女にプレゼントした手袋をはめた。ぴったりの手袋を見て「そうか…お前も見つけたんだな…その為に地獄に堕ちたっていいと思えるものを…」と娘に語る。娘のための懺悔と祈りと共に彼の命は尽きた。

 

そして逃げ切れたものの刺されて瀕死のドゥカラは伝書鳩でヨレンタから託された手紙を送る。「間違えた…死んだら終わりだ…」と嘆くドゥカラの前に朝の美しい光景が現れた。今までずっと、父が朝死んだからという理由で忌み嫌っていた朝の光。それはシュミットが愛したものでもあった。ドゥカラは初めてその美しさを知った。

 

そして、彼女は笑顔を浮かべて死んでいった。

 

最後は「1468年ポーランド王国都市部」というエピソードで締められている。ここは哲学的な事が語られるのだが、ここに登場するアルベルトという青年は実在した人物。天動説一般に対して疑念を示す講義を行った大学の教員であり、『惑星の新理論』という教科書の注釈書を書いた。

 

そして、この注釈書で天文を学んだ同大学の生徒の一人にコペルニクスという名の青年がいた。

 

まとめは以上ですが、名作過ぎて私の言葉などを足してしまったら作品の汚れにしかならなそうなので、ここまでにしておきます。