世界を俯瞰する傍観者の記録

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『デジタル・ファシズム(堤未果)』―教育が狙われる―

デジタル・ファシズム 政府が狙われる

デジタル・ファシズム マネーが狙われる

 

第7章 グーグルが教室に来る!?

 

4500億円利権のGIGAスクール構想

 

GIGAスクール、生徒一人一台のタブレット支給とクラウドの活用、高速大容量インターネット通信環境を全国の国公私立の小中学校に整備するというものだ。予算額は4500億円超え。

 

プログラミング教育に楽天三木谷浩史、デジタル教科書にソフトバンク孫正義が参入し、当然この2社は5G接続も手がける。更に、グーグル、マイクロソフト、アップルの争奪戦が展開され、生徒たちの情報はこういったプラットフォームに収集されていくのだ。

 

このタイミングで「個人情報保護」のルールは緩和され、それまで自治体で定めていたものがリセットされ国のルールに合わせることになった。思想信条や犯罪歴、病歴といったセンシティブ情報も収集禁止が解禁された。

 

マイナンバーと生徒の成績の紐づけが検討されている。健康保険とマイナンバーの紐づけも開始されており、子供たちの総合データの収集も近い将来可能となるだろう。

 

公立学校の敷地に5G基地局が建てられる

 

楽天モバイル基地局を学校の敷地内に設置することを条件に光回線を無料提供する「GIGAスクール構想支援プラン」……これに真っ先に手を挙げたのが千葉市熊谷俊人市長楽天と協定を締結した。5Gの子供たちの健康への影響を不安視する人達から批判の声があがった。

 

「東京ですでに増えつつある基地局は、あなたの住む地域でスーパーシティが始動すれば、生活の一部になる。専門的な知識がないからと諦めてしまわずに、しっかりと注視してゆかなければならない」のだ。

 

教師は全国で1教科ごとに一人いればいい

 

優秀な教師のオンライン授業を全国の子供たちが液晶画面で見る。教師の仕事は教えることではなくなり、デジタルリテラシーの高い人材が要求されるようになる。

 

「人間は対面で触れ合うことで初めて、共感を育む脳機能がオンになる。教える側に多様性が必要ないならば、教育はもはや一方通行の”情報”だ」

 

7章、この後は、パンデミックを利用してオンライン教育を加速させた各国の状況が書かれているが省略する。

 

第8章 オンライン教育というドル箱

 

アメリカの近代教育の流れを追った章。

 

80年代にアメリカ政府は国の規制を受けない民間の〈チャータースクール〉補助金をつけ、保護者が学校を自由に選べる〈バウチャー制度〉を導入した。

 

この流れで「子供たちのための寄付行為」が投資になっていった。(もちろん、ビル・ゲイツも参入)このチャータースクールはあらゆる規制が緩和された投資商品だ。そして、5~7年で2倍のリターンが保証される有望な投資商品となった。

 

そしてオバマ大統領がこのベンチャー型チャリティと協力にタッグを組んだことでチャータースクールの数は一気に増えた。

 

だが、利益至上主義で運営さえるチャータースクールの劣悪さが抑えきれなくなってきたとき、ウォール街マイケル・モー(グローバルシリコンバレー・パートナーズは次なる手を打った。

 

「デジタル教育が、次のゴールドラッシュとなるのです」

 

こうしてスタートした「デジタルのチャータースクール」というビジネスモデルはパンデミックの後押しで更に加速した。しかし、今アメリカでは「子供たちのために公教育を見直す空気」が確実に大きくなっている。

 

第9章 教科書のない学校

 

13億人のAI教師がいれば生身の先生はいらなくなる?

 

13億人のAI教師とは、年間13億台生産されているアンドロイドのスマホのことだ。AI教師のみになるのはまだ時間がかかるとしても、教師の数はかなり減るだろう。そして、公務員が守るべき法律に縛られない「非正規雇用」が主流になるだろう。

 

だが、教育とはそれだけのものだろうか?

 

タブレットがないと、全部自分の頭で考えないといけない」

 

だから、タブレットが必要なのではなく、問題視しないといけないのだ。

 

東京大学大学院総合文化研究所の酒井邦嘉教授

「デジタルはあくまでも補助、主体は紙という基本を変えるべきではありません。結果が出ないから頭で考え、工夫して、忘れないように付箋をつける。手間のかかるそのプロセスこそが、脳にとって大切な学びだからです」

 

教科書のない学校

 

堤未果氏の母校である和光小学校の「自分で考える」すばらしい教育の話

 

ビル・ゲイツは自分の子供にスマホを持たせない

 

他者の行動やその意図を理解するミラーニューロンという脳内神経細胞を機能させるには、実際に人と対面で会う必要がある。

 

シリコンバレーの保護者たちはそれを知っている、ということだ。

 

情報の多様性を体で感じる―荒川区学校図書館活性化計画

 

子供たちの「情報分析・収集する力」と「批判的思考」を育むための図書館での授業。デジタルテクノロジーを否定することなく紙媒体のリアルな情報から答えを探す取り組み。

 

荒川区教育センター学校図書館支援室長の清水隆彦氏は指摘する。

「ノートを取らずタブレットの情報を目で見るだけの知識は、次の情報が入るとすぐに上書きされてしまう」と。

 

待てないデジタルと、待つことの価値

 

スピードこそが価値を持つ世界の中で、社会全体が待てなくなっている。デジタル化はそれに拍車をかけるだろう。

 

公民館も図書館も街の本屋さんもどんどん減って、多様な人が集まれる場所が次々に消えている。私たちは大人にとってのパブリックなプラットフォームまで失っていくのだ。

 

SNSに依存することは「自分と異なる価値観の他者と触れあう場所を失う」ことでもある。そしてそれは、フェイスブック創設者マーク・ザッカーバーグの言葉のように「今世紀最大の大衆操作ツール」でもある。

 

タブレット情報格差を見えなくする

 

これがオンライン教育の落とし穴。情報は平等でもなく、万能でもない。先のアメリカ大統領選では民主党支持者にのみ「明日は投票日です」のポップアップが出たという。これはビックテックの手で意図的に操作されて作られた情報格差の例だ。

 

教育改革は決して急いではいけない

 

政治が企業に忖度だらけの日本と対極にあるのがフィンランド。今は国際テストで高得点をあげているが、かつて学力がとても低かった。そこからの快挙を成し遂げられたのは一重に「子供たちの未来を善きものものにしたい」という長年の信念によるもの。時間をかけてゆっくり育てた教育改革の結果なのだ。

 

日本はマイナンバーと紐づけられた子供たちの学習履歴が国内外の教育ビジネスに流れないように注意しなければいけない。そして子供たちにGAFAの外にも世界がある」と教えなければいけないのだ。

 

「デジタル・ファシズム」の中で、最もファシズム化していく分野は教育だからだ。それは長期にわたって人間の思想を形成し、最も洗練された形で、国家と、そこに住む人間の力を削いでゆく。

 

倫理を持たないAI vs. 未来を選ぶ私たち

 

倫理観は死を迎えるからこそ持てるもの。だからAIには倫理観がない。AIは問いはくれない。くれるのは「答え」だけ。人間にとって大事なのは「問う」ことだ。

 

GAFAが奪うのは単なる個人情報やプライバシーではない。「未来を選択する権利」が奪われるのだ。

 

デジタル・ファシズムを阻止する唯一の方法は、私たちがより人間らしくなることなのだ。

 

エピローグ

 

世界経済フォーラムが描くデジタル新世界はデジタル・ファシズムを一度は完成させるだろう。

 

だが

 

2018年5月25日、EUで個人情報の保護を「基本的人権」とみなして保護する、一般データ保護規制(GDPR)が施行された。

 

この法律はそれまで無法地帯だったネット空間に法的拘束力でプライバシー保護を導入する、GAFAにとって痛恨の一撃だった。

 

「おかしい」と口に出すたった一人の声が、多くの人が絶対に変えられないと思いこんでいることを変えるのだ。

 

どれだけAIが発達し、情報処理のスピードと量で圧倒しても、無限の可能性を持つ未来に向かって問うことは、人間にしかできないからです。

 

 

(エピローグ、感動してちょっと涙がこぼれました by ブログ主)