第Ⅰ部 政府が狙われる
第1章 最高権力と利権の館「デジタル庁」
・暗号化キーが中国北京のサーバーを経由していたZoom
・整体識別情報を自動収集するTikTok
世界が規制をかけたこれらのツールやアプリにまったく危機感を抱かずに推奨し続けたのが日本政府。そんな日本にデジタル庁が設置された。これは、内閣府の上位に位置するほど権限が大きく巨額の予算がつく省庁である。
更に政府は「中央省庁向け政府共通プラットフォーム」のベンダーにアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)を選んだ。amazonはCIAやNSAといった米国諜報機関と関係が深い企業であるにも関わらずだ。
GAFAのロビー活動によって政府が強引に通過させた「日米デジタル貿易協定」によって、個人情報などを管理するデータは日本国内に置けなくなった。これは「デジタルを通して私たち日本人の資産をアメリカのグローバル企業に際限なく売り渡す協定」なのだ。
そして、米政府の要求で企業の持つデータがいつでも開示される「クラウド法」。
こんなリスクの多いデジタル化を日本政府はなぜ拙速に進めるのか?
第2章 「スーパーシティ」の主権は誰に?
街を丸ごとデジタル化する構想は3.11で米国が青写真を描き、アクセンチュアが着々と進めてきた。このプロジェクトには竹中平蔵が絡んでいて、スピード重視で国民の意志は二の次となる。更に責任の所在もわからない。(ロボットタクシーの事故の場合の責任等)張り巡らされる5Gの安全性も立証されていない。個人情報の扱いも緩くなる。
こんな問題を孕んだ「改正国家戦略特区法(スーパーシティ法)」が国民の関心も集めず簡単に通ってしまったのにはわけがある。
その日世間を賑わせていた別のニュースがあった。「検察庁法案改正案」だ。ネットやSNSがお祭り騒ぎになったそのニュースが煙幕になってスーパーシティ法はあっさりと国会を通過した。
実は2013年にこの法律の地ならし的な「国家戦略特区法案」も国会を通過しているのだがその時用意されていたスピンは「特定秘密保護法案」だった。この道筋を敷いたのは竹中平蔵。こうしてビジネス天国の特区ができあり、そこでは「公共の概念」が失われていく。
民営化による公共の切り捨てによって、国家公務員は81万人(2001年)から28万5000人(2017年)に減った。有事の際にその弊害は現れる。国民の命にさえ関わるのだ。
アメリカのケースでは「デジタル化で経費削減」を謳いながら「福祉手当を受給させない」という弱者の切り捨てに利用された。ケースワーカーは受給者を減らすことでインセンティブがもらえるため非情なロボットとなった。
また、「信用スコア」という問題もある。デジタル化による人間の分断で人々は団結することができない。そして「信用スコア」によって抑え込まれていくのだ。
第3章 デジタル政府に必要なたった一つのこと
デジタル化の失敗例(フィリピンのケース)
民間の電力会社「NGCP」を入れたら中国企業「国家電網公司」の資本が入っていた。結果、フィリピンの送電網を動かしているサーバー設備が中国の南京市に移された。有事の際にはスイッチ一つで国中が停電にされることもあり得る。
日本は
サーバーを制するものがデジタルを制す。なのに日本をはじめRCEPの参加国は北京にサーバーを置かれても文句が言えない。また、中国企業は自国政府からの情報開示を拒めない。日本の情報は筒抜けになる。
デジタル先進国のエストニアの秘策
透明性を確保するための「強い規制」がある。個人情報は1か所に集められるが、その代わりにデータに対する権利は個人に帰属する。だから、政府や企業が自分たちの都合で勝手に使うことはできない。更に、国民は自分のデータをいつでも削除できる権利を持っている。
世界経済フォーラム創設者クラウス・シュワブの描く未来
すべてをつなげる5GやAIなどの新しい技術が、日常を送るうえで必要な様々な事項を本人の代わりに決定してゆくようになるという。そして私たちの小さな行動から個人的傾向、人間関係に至るまで、24時間デジタル監視された個人データが、フェイスブックやファーウェイやグーグルのような、一握りの巨大プラットフォーマーの元に集められてゆくようになる
そしてその先には、肉体とデジタル、個人のアイデンティティを融合させる「第4次産業革命」という新世界が展開する。
難民の行動をデジタルIDで管理する ID2020 計画
「すべての難民にIDを」のスローガンの元に進められる技術開発。デジタルIDの技術開発を進めているのは山梨県にあるパティック・トラスト社。
この技術はワクチンとも連携する。
個人情報は「性悪説」で守るべし
エストニアとは真逆に日本は個人情報の保護をますます緩める法改正をしている。朗報が一つだけある。スーパーシティは自治体ベースだということ。自治体でストップをかけることは可能なのだ。
カナダのトロントではデジタル都市計画に対する不満が募り、グーグルの姉妹会社を市民たちが追い出したという例もある。
デジタル政府に必要なたった一つのこと
台湾のデジタル担当大臣オードリー・タン氏曰く
「デジタル行政は、決して私たちの方向性を変えるわけではありません。政府も国民も同じ方向を向いていることを忘れないことが重要です」
デジタル政府に必要なたった一つのことは「公共」の精神なのだ。